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1997年度総会報告


【総会報告】

 4月28日の例会(白雲荘)において、中国文芸研究会1997年度総会が開催されました。
 総会では、事務局より宇野木が以下の「総会議案(原案)」に基づいて96年度活動報告と97年度活動方針を提案し、同じく松浦が『野草』第60号編集状況と『会報』「書評委員会」に関わる補足報告を行ないました。その後、30分以上にわたる議論と意見交換を行なった結果、提案は基本的に承認されました。なお、総会の場で提出された意見は、以下の「総会議案」に反映させています。
 また、96年度決算と97年度予算案の報告と会計監査報告も行なわれ、全て了承されました。



 1997年度 中国文芸研究会総会議案         (於 1997.4.27 白雲荘)

T.1996年度活動報告

 96年度の本研究会の活動は、『野草』『会報』の発行を始め、「例会」「夏期合宿」「野草基金特別事業」などにわたって、全般的には高い水準が維持されたと言えよう。会員数も240名(97.4.1現在)と安定的な増加傾向にあり、とりわけ若手層の加入が目立つ点が最近の特徴となっている。また、研究会の「ホームページ」(青野繁治作成。http://203.181.29.188/bungei/bungei.htm)を立ち上げ、『野草』掲載論文の検索を始め、研究会に関する様々な情報を世界に発信することが可能になったことも画期的な成果である。 しかし、運営面では、新たな事務局体制を確立して一定の「世代交代」を進めたものの、各種機能の有機的連係を十分には図りきれなかったという弱点も残した。また、研究活動面では、幾つかの新機軸を試みたが、『会報』の量質両面における活力不足傾向や「例会」発表希望者の減少傾向といった、過去と比較した場合に眼につく問題を、依然として克服しきれていない点は、率直に確認しておく必要があるだろう。
 以下、各項目に従って活動状況を紹介する。

(1)『野草』刊行について
 第58号(斎藤敏康編集担当)、第59号(青野繁治・大西紀編集担当)は予定期日に出版することができ、第60号(松浦恆雄・好並晶編集担当)、第61号(絹川浩敏編集担当)も編集作業が進展しつつある。
 この1年間の特徴は、引き続き「特集」企画を定着させてきた点と、幾篇かの力作論文を掲載してきたことにある。だが、編集作業と「原稿審査(査読)」の時間を十分に確保すべく設定してきた原稿提出締切が、守られなくなりつつあるという弱点も顕在化してきた。そのため、「原稿審査」が十全の役割を発揮しにくい状況も生じ、合評において論文掲載への意見が提出される事態も、部分的にせよ生まれたと言える。また、版下作成を行なっている『野草』印刷担当(谷川毅)に多大な負担をかけることにもなった。今後、締切の厳守を徹底し、「原稿審査」の機能とあり方をよりいっそう発展させること、そして何よりも長期的な編集計画を策定することが課題となっている。入稿形態におけるフロッピィ入稿については、ほぼ完璧に定着した。

(2)『会報』発行について
 今泉秀人・田辺鉄・平坂仁志・好並晶の4人の編集担当体制によって、第175号(5月)〜第186号(4月)まで、毎月順調に発行したが、投稿の減少や掲載論稿の内容・レベルのばらつき、「交流」欄の弱まりといった近年の課題は残されたと言えよう。
 96年度より新設した「書評委員会」は、こうした状況を克服する方策の1つでもあった。「書評委員会」の活動の一端は『会報』紙面に反映され一定の活性化を実現したが、当初の目的から見れば不十分性も残った。「例会」における報告概要と質疑・討論内容の紹介を『会報』に掲載するという方向性も、幾つかの試みはありながらも十分に行なわれたとは言えない。「書評委員会」と『会報』の連係を強化すると同時に、誰でも気楽に投稿できる、機動性のある研究情報紙としての『会報』の特徴を再度打ち出すことが必要であろう。

(3)「例会」開催について
 年間10回の開催は確保し、毎回コンスタントな参加者を得て、安定して開催している。だが、発表内容は基本的に高い水準となったものの、発表希望者の時期的ばらつきといった問題も生じてきている。『野草』の「特集」関連の報告が、意識的に組み込まれた点は「例会」の充実にプラスに作用した。関西訪問中の中国人研究者の参加が増えたことも今期の特徴である。

(4)「夏期合宿」について
 96年度は、9月3〜5日の3日間にわたり、滋賀県東浅井郡の「須賀谷温泉」において開催された。関西圏以外からの参加者を含めてのべ18名が参加し、計7名に及ぶ報告と静かで美しい環境とによって充実した内容となった。ただし、参加人数が例年より少なかった点は残念だった。今後、工夫が求められている。

(5)「野草基金特別事業」関係について
 96年度は、『今天』復刻と『中国20世紀文学研究ガイド(仮称)』作成へ向けた作業に取り組んだが、完成・刊行にまでは至らなかった。持続的な作業体制の確立と共同作業者の拡大が課題である。


U.1997年度活動方針

 97年度は、『野草』『会報』の発行、「例会」「夏期合宿」の開催など、研究会の全般的活動の水準を低下させることがないように、責任体制をより明確にした事務局を構成し、各種活動の連係を重視する中で円滑な運営を図る必要がある。
 特に、『会報』「例会」などの活性化・充実へ向けた試みとして、96年度より設置された「書評委員会」の役割と機能を、いっそう重視する必要がある。そのためにも開催のあり方などについて、より工夫していく必要があろう。

1.各種事業について

(1)『野草』刊行
 「特集」を軸にした長期的な発行計画を、早期より明示して編集作業を進める必要がある。また、関西在住以外の会員にも広く原稿執筆を呼びかけていくことが求められている。なお、締切厳守の徹底を図ることが重要である。
 「原稿審査(査読)」の方法については、その客観性と公平性を、今後とも継続して追求すべきであり、また「例会」に参加できない会員のために、「合評」の経過を『野草』誌面に反映することも、引き続き重視しなければならない。
 こうした点を強化していくために、今年度より編集作業には事務局担当幹事(の1名)も加わり、編集委員会との連係を密にすることを試みる。もちろん、企画・編集の中心は従来通り編集担当が担うことは断わるまでもない。
 当面の発行計画は以下の通りである。
  ★第60号――1997年3月末締切、97年8月1日刊行予定。編集担当:松浦恒雄・好並晶
  ★第61号──1997年9月末締切、98年2月1日刊行予定。編集担当:絹川浩敏(宇野木洋=事務局担当幹事から)
  ★第62号──1998年3月末締切、98年8月1日刊行予定。編集担当:今泉秀人(阪口直樹=事務局担当幹事から)

(2)『会報』発行
 今泉秀人(責任者)・田辺鉄・平坂仁志・好並晶(留学予定により9月まで)・和田知久(9月から)の編集担当体制によって、毎月発行を維持すると同時に、内容の充実・活性化をいっそう図っていくことが課題である。また「書評委員会」との連係を強化するために、松浦恒雄が投稿依頼や企画のコーディネーターとして加わる。
 「書評委員会」の活動などを受けて、「論文時評」「書評」「舞台・映画評」「個人著書紹介」といった『会報』企画を強める必要があろう。また、「例会」における報告概要と質疑・討論内容の紹介を、1、2ヵ月後の『会報』に掲載することも徹底を図り実現していく。執筆者は、原則として報告者とするが、コメンテイターに批評文を依頼することもある。
  ★担当体制――4・8・12月号(田辺)/5・9・1月号(平坂)/6・10・2月号(今泉)
         /7・11・3月号(好並+和田)
  ★原稿締切――発行前月月末
  ★原稿送付先―平坂仁志
          ★原稿は原則としてフロッピィ入稿とし、返却は行なわない。ただし、原稿・写真等の返却を希望される場合は、その旨申し出て、返信用封筒(切手添付)を同封することとする。

(3)「例会」開催
 「例会」の開催は、例年通り、年10回とする。各月最終日曜=午後1:30開会。ただし7・8月を除く(「夏期合宿」を例会に充当)。また、12月は忘年会を兼ねるため、最終日曜開催とは限らない。  講演(会員外・他分野・外国人研究者など)・書評を年間各1回程度、時期を選んで行なう。『野草』合評は討論内容を合評報告として『野草』誌上に反映する。『野草』の「特集」テーマに関する報告は、必要に応じて数回組み込むこととする。従って、年間10回程度が個人(会員)の自由な研究発表の場となる。準備の都合上、研究発表希望者は早目に申し込むことを心掛ける必要がある。コメンテイターについては臨機応変に考えることとする。
 また、「例会」と『会報』の連係を強め、研究活動を活性化させるため、報告者またはコメンテイターは、報告概要と質疑・討論内容を整理して1、2ヵ月後の『会報』に掲載する。これにともない、従来行なっていた、前月『会報』への報告要旨掲載については、大幅に簡略化する(おおよそのテーマと参考文献程度)。
  ★「例会」カレンダー(前半期までの報告予定者。なお、単純計算で通年14回の発表の機会があるが、随時、「特集」関連報告、講演・書評などが入る)
  4月 総 会     @瀬戸宏
  5月 A濱田麻矢   B阪口直樹
  6月 C藤野真子   D絹川浩敏
  7-8月 (「夏期合宿」を7・8月例会にあてる)
  9月 『野草』60号合評
  10月 E       F
  11月 G       H
  12月 忘年会     I講演・書評など
  1月 J       K
  2月 L       M
  3月 『野草』61号合評
  ★会場は、偶数月の白雲荘(京都会場=〒602 京都市上京区寺町上立売上ル2筋目西入ル Tel 075-231-1320)は従来通りだが、諸般の事情により、奇数月についても、9月までは白雲荘とする。それ以降については早急に検討する。大阪在住会員には不便をおかけするが、ご了承いただきたい。
  ★発表希望者は、「例会」担当:北岡正子まで申し込むこと。

(4)「夏期合宿」開催
 例年通りの要領で開催するが、日時、場所は別記の通りとする。またテーマ・報告者などについては、「夏期合宿」担当:斎藤敏康・中澤智恵が中心となり計画を煮詰める。
 97年度「夏期合宿」スケジュールは以下の通り。
  ★日時:9月8日(月)〜10日(水)
  ★場所:奈良県吉野
  ★内容(案):@中国20世紀文学史の構想
         A王暁明編『20世紀中国文学史論』合評
         B個人発表(希望者募集中)

(5)「書評委員会」の役割
 「書評委員会」の役割は、内外の論文・書籍などの批評を定期的に積み重ねることを通じて、その成果を『会報』の編集内容の企画につなげていき、更に『会報』を「例会」にリンケージさせる中で、各種研究活動の活性化を図っていくことにある。当面、松浦恒雄を責任者として企画・運営を行なう。
 97年度は委員の確定を行なわず、広範な参加を呼びかけ、「問題意識交流会」的な場として位置づけていく。若手会員を始め、多数の会員の出席と活発な発言を期待する。従って、「書評委員会」という名称は誤解を招きやすいので、名称変更も検討する。
 原則として、偶数月の最終日曜(「例会」当日)11:00より開催する。

(6)「特別事業」計画
 阪口直樹の担当とし、短期及び長期的計画を作成しつつ、その実施に入る。研究会の事業として、現在のところ、以下のものを予定・検討している。
  @『今天』復刻版刊行
  A『中国20世紀文学研究ガイド』(仮称)作成
  Bその他
 なお、独立会計扱いとなっている「野草基金」をより有効に活用するためには、如何なる形態があり得るのか、引き続き検討を深める。


(7)「野草ネットワーク」について
 パソコン通信を利用した『会報』『野草』の編集の効率化は定着した。コンピュータネットワークは、単に事務の効率化に留まらず、遠隔地との交流や種々の情報提供手段としても、大きな可能性を持っているのは明らかである。それを全ての会員のものとするために、インターネットの普及なども視野に入れつつ、今年度も引き続き検討を深める。その第1歩として、研究会「ホームページ」をより豊かな内容に充実させていくことが必要であろう。

2.運営体制について

 研究会の運営は、事務局、『野草』編集委員会、「書評委員会」及び運営委員会によって行なう。

(1)事務局
 事務局は、総会決定に基づき、『会報』編集・「例会」開催・『野草』印刷などの日常的な実務を担当する。今年度より事務局担当幹事を設定し、責任体制をより明確にしていく。今年度の幹事は、宇野木洋(運営)・松浦恒雄(研究活動)・阪口直樹(企画)の3人で担う。ほかに、北岡正子(「例会」担当)、絹川浩敏・中澤智恵(財政・組織担当)、谷川毅(『野草』印刷担当)、今泉秀人・田辺鉄・平坂仁志・好並晶・和田知久(『会報』編集担当)によって事務局を構成する。

(2)『野草』編集委員会
 『野草』編集委員会は、今年度『野草』編集担当の松浦恒雄・好並晶(60号)と絹川浩敏(61号)、谷川毅(『野草』印刷担当)、北岡正子(「例会」担当)、宇野木洋・松浦恒雄・阪口直樹(事務局担当幹事)、太田進(運営委員長)で構成する。

(3)「書評委員会」
 各種研究活動活性化へ向けて大きな役割を果たすことが期待される「書評委員会」は、松浦恒雄(責任者)と昨年度委員の阪口直樹・宇野木洋・絹川浩敏・今泉秀人が中心になって運営を行なう。しかし、固定化された「委員会」としてでなく、多数の会員の自由参加による「問題意識交流会」的な内容にしていく。

(4)運営委員会と会計監査
 運営委員会は、事務局で処理が困難な問題が生じたり、長期的大局的観点が必要とされる場合に、運営委員長の責任で開催され、問題の処理にあたる。その構成は、太田進(運営委員長)・筧文生・是永駿・岡田英樹・斎藤敏康・青野繁治及び事務局構成メンバーとする。
 なお、財政の健全な執行を図るべく、会計監査:松村昂を置く。
                                (以上、敬称略)
中国文芸研究会1996年度会計決算報告(1996.4.2〜1997.4.1)  −略−
中国文芸研究会1997年度予算案(1997.4.2〜1998.4.1)     −略−

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