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1998年度総会報告


 4月26日の「4月例会」(白雲荘)において、中国文芸研究会1998年度総会が開催 されました。

 総会では、事務局を代表して宇野木が、以下の「総会議案(原案)」に基づいて「 97年度活動報告」と「98年度活動方針」を提案し、同じく松浦が補足報告を行ないま した。その後、約1時間にわたる議論と意見交換の末、提案は基本的に承認されまし た。今回の総会における議論の特徴は、研究会を日常的に運営していくことの大変さ を共通認識として、いわゆる若手層を含めて会員全体で運営を担っていくことの重要 性を改めて確認し、具体的な運営体制を築きあげた点にあったと言えます。なお、総 会の場で提出された意見その他は、以下の「総会議案」に、すでに反映させています のでご了解下さい。

 なお、本来なら97年度決算と98年度予算案の承認ならびに会計監査報告も行なわな ければならなかったのですが、事務局の準備不足(「特別事業」関連財政の決算・整 理が過渡的状況にあったことなども要因の1つでしたが、言い訳に過ぎません)によ り、提案できずに終わっています。会員の皆さんに心よりお詫びすると同時に、「5 月例会」で必ず報告・提案するようにいたします。この点は総会の場でも了承いただ きましたが、参加できなかった会員の皆さんのご了解をもお願い申し上げる次第です 。

(事務局担当幹事)


1998年度 中国文芸研究会総会議案 (於 1998.4.26 白雲荘)


T.1997年度活動報告

 97年度の本研究会の活動は、『野草』『会報』の発行を始め、「例会」「夏期合宿 」「野草基金特別事業」などにわたって、全般的には従来の水準を維持してきたと言 えよう。会員数も260名(98.4.1現在)と安定的な増加傾向にあり、とりわけ若手層 の加入が目立つ点が最近の特徴となっている。
 しかし、運営面では、新たな事務局体制を確立して「世代交代」を進めたものの、 各種活動の有機的連係を、未だ十分には図りきれなかったという弱点も残した。また 、研究活動面では、幾つかの新機軸を試みたが、『野草』『会報』原稿や「例会」発 表希望者の減少といった活力不足の傾向が、依然として十分には克服されていない点 は、確認しておく必要があるだろう。
 以下、各項目に従って活動状況を紹介する。

(1)『野草』刊行について
 第60号(松浦恆雄・好並晶編集担当)、第61号(絹川浩敏編集担当)は予定期日に 出版することができ、第62号(今泉秀人編集担当)も編集作業が進展しつつある。
 この1年間の特徴は、引き続き「特集」企画を定着させてきた点と、幾篇かの力作 論文を掲載してきたことにある。だが、編集作業と「原稿審査(査読)」の時間を十 分に確保すべく設定してきた原稿提出締切が、厳守されなくなりつつあるという弱点 も顕在化してきた。そのため、「原稿審査」が十全の役割を発揮しにくい状況も、部 分的にせよ生じたと言える。97年度より編集作業には事務局担当幹事(の1名)も加 わり、編集委員会との連係を密にすることを試みたが、十分に機能しきれなかった点 は反省しなければならないだろう。
 また、会員からの投稿が減少傾向にあり、このことが編集作業の困難と遅れの一因 ともなっている。今後、締切の厳守を徹底し、「原稿審査」の機能とあり方をよりい っそう発展させること、長期的な編集計画を策定すること、そして何よりも会員全体 に呼びかけ会員全体に依拠していくことが課題となっている。なお、入稿形態におけ るフロッピィ入稿については、ほぼ完璧に定着した。

(2)『会報』発行について
 今泉秀人・田辺鉄・平坂仁志・好並晶(中国留学により9月まで)・和田知久(9月 から)の5人の編集担当体制によって、第187号(5月)〜第198号(4月)まで、毎月 順調に発行した。しかし、投稿の減少や掲載論稿の内容・レベルのばらつき、「交流 」欄における情報収集の不十分性といった近年の課題は残されたと言えよう。年度途 中より、「特別寄稿者」依頼を行なうなど前進を見たが、丁寧なフォローに欠けた側 面も生じた。
 こうした状況を克服する方策の1つとして96年度より新設した「書評委員会」の活 動は、それとの連係強化へ向けた企画コーディネーター(松浦恒雄)の設置などによ り、その一端が『会報』紙面に反映されて活性化を見せつつある。だが、当初の目的 から見れば不十分性も残った。「例会」報告とのリンクという方向性も、幾つかの試 みはありながらも十分に行なわれたとは言えない。「書評委員会」と『会報』の連係 を強化すると同時に、誰でも気楽に投稿できる、機動性のある研究情報誌としての『 会報』の特徴を再度打ち出すことが課題となっている。

(3)「例会」開催について
 年間10回の開催は確保し、毎回コンスタントな参加者を得て、安定して開催してい る。若手の参加が増加し、発表内容も基本的に高い水準となりつつあることは喜ばし い。だが、発表希望者が時期的にばらついてしまうという現象が生じてきている。『 野草』の「特集」関連の報告が意識的に組み込まれた点や、異なる領域(中国現代史 ・日本現代文学など)の研究者を招いて研究動向を紹介してもらい、問題意識の交流 を深めることができた点などは、「例会」の新たな展望を示したと言えよう。

(4)「夏期合宿」について
 97年度は、9月8〜10日の3日間にわたり、奈良県吉野町「湯川屋」において開催さ れた。のべ23名が参加し、若手・中堅を中心に計11名に及ぶ大量の報告と、静かで美 しい環境とによって充実した内容となった。「新しい文学史を構想する」が統一テー マとして設定されたこと、杜国清氏(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授・詩 人)をゲストに招いたことが、今回の特徴と言える。

(5)「野草基金特別事業」関係について
 97年度は、『今天』復刻版を刊行できたことが最大の成果である。芒克氏の来日も あって新聞報道されるなど、全国的にも反響を呼び注目を集めた。全国の会員の協力 もあって、財政的にもプラスに作用しつつある。また、『中国20世紀文学研究ガイド (仮称)』作成へ向けた作業にも引き続き取り組んだ。

U.1998年度活動方針

 98年度は、『野草』『会報』の発行、「例会」「夏期合宿(1930年代研究会との合 同合宿)」の開催など、研究会の全般的活動の水準を維持し向上させることが課題で ある。ただし、従来の事務局・実務担当者が就職・留学などで関西を離れるケースが 多く生じており、運営上の困難も予想される。責任体制をより明確にした事務局を再 編強化し、各種活動の連係を重視する中で円滑な運営を図ることが求められていよう 。特に、若手層の具体的・主体的参加のあり方を工夫する必要がある。
 また、『会報』「例会」などの活性化・充実へ向けた試みとして設置された「書評 委員会」の役割と機能を、いっそう重視する必要がある。開催のあり方などについて も、より工夫していかねばならない。

1.各種事業について

(1)『野草』刊行
 長期的な発行計画を、早期より明示して編集作業を進める必要がある。「特集」を 軸にした展開を追求するが、それのみを絶対化することなく、全国の会員にも広く原 稿執筆を呼びかけていくことが求められている。なお、締切厳守の徹底を図ることが 依然として重要であることは断わるまでもない。
 「原稿審査(査読)」の方法については、編集委員会の機敏な開催などによって、 その客観性と公平性を今後とも継続して追求すべきである。また「例会」に参加でき ない会員のために、「合評」の経過を『野草』誌面に反映することも、引き続き重視 しなければならない。
 当面の発行計画は以下の通りである。
  ★第62号──1998年3月末締切、98年8月1日刊行予定。編集担当:今泉秀人
  ★第63号――1998年9月末締切、98年2月1日刊行予定。編集担当:宇野木洋
  ★第64号──1999年3月末締切、99年8月1日刊行予定。編集担当:岡田英樹

(2)『会報』発行
 今泉秀人・平坂仁志・和田知久・田辺鉄(4月のみ)・好並晶(9月から)の編集担 当体制によって発行していき、内容の充実・活性化をいっそう図っていくことが課題 である。なお、200期記念号以降の『会報』の発行計画については、早急に検討を深 めたい。
 「書評委員会」との連係をより強化するために、松浦恒雄が投稿依頼や企画のコー ディネーターとして引き続き加わる。「特約寄稿者」システムの充実と丁寧なフォロ ー、「交流」欄の充実に向けた手立ても不可欠である。
 「書評委員会」の活動などを受けて、「論文時評」「書評」「舞台・映画評」「個 人蔵書紹介」といった『会報』企画を強める必要があろう。また、「例会」における 報告概要と質疑・討論内容の紹介を、『会報』に掲載することも徹底を図り実現して いく。執筆者は、原則として報告者とするが、コメンテイターに依頼することもある 。
 上述したように、6・7・8月号を合併号として200期記念号を発行する。内容に関し ては、会員アンケート(研究情報交流)・『会報』の思い出・『会報』総目録などと する。
  ★担当体制(予定)――4月号(田辺)/5・9・1月号(平坂)/6+7+8・10・2月号( 今泉)/6+7+8・12月号(和田)/11・3月号(好並)
  ★原稿締切――発行前月の月末
  ★原稿送付先―平坂仁志
     ★原稿は、原則としてフロッピィ入稿にプリントアウトを添付(外字部分を明記 )することとし、返却は行なわない。ただし、原稿・写真等の返却を希望される場合は、 その旨申し出て、返信用封筒(切手添付)を同封することとする。

(3)「例会」開催
 「例会」の開催は、例年通り、年10回とする。各月最終日曜=午後1:30開会。ただ し7・8月を除く(「夏期合宿」を例会に充当)。また、12月は忘年会を兼ねるため、 最終日曜開催とは限らない。
 講演(会員外・他領域・外国人研究者など)・書評を年間各1回程度、時期を選ん で行なう。『野草』合評は討論内容を合評報告として『野草』誌上に反映する。『野 草』の「特集」テーマに関する報告は、必要に応じて数回組み込むこととする。従っ て、年間10回程度が個人(会員)の自由な研究発表の場となる。準備の都合上、研究 発表希望者は早目に申し込むことをお願いしたい。コメンテイターについては臨機応 変に考えることとする。
 また、「例会」と『会報』の連係を強め、研究活動を活性化させるため、報告者ま たはコメンテイターは、報告概要と質疑・討論内容を整理して1、2ヵ月後の『会報』 に掲載するように努力する。これにともない、従来行なっていた、前月『会報』への 報告要旨掲載については、大幅に簡略化する(おおよそのテーマと参考文献程度)。
  ★「例会」カレンダー(前半期までの報告予定者。なお、単純計算で通年14回の 発表の機会があるが、随時、「特集」関連報告、講演・書評などが入る)
  4月 総 会     @王中忱
  5月 A岡田英樹   B秋吉収
  6月 C瀬戸宏    D菅原慶乃
  7-8月 (「夏期(合同)合宿」を7・8月例会にあてる)
  9月 『野草』62号合評
  10月 E       F
  11月 G       H
  12月 忘年会     I講演・書評など
  1月 J       K
  2月 L       M
  3月 『野草』63号合評
  ★会場は、偶数月は白雲荘(京都会場=京都市上京区寺町上立売上ル2筋目西入ル Tel 075-231-1320)とし、奇数月は大阪経済大学(大阪会場=大阪市東淀川区大隅2-2-8)とする。
  ★発表希望者は、「例会」担当:北岡正子まで申し込むこと。

(4)「夏期合宿」開催
 98年度は、東京の「1930年代文学研究会」との合同合宿として、東西の若手研究者 の交流をメインテーマに、以下の日程で開催する。またテーマ・報告者などについて は、東京側と連絡を密に取りながら煮詰めていく。本研究会側の窓口は、事務局担当 幹事(宇野木洋・松浦恒雄・阪口直樹)が担い具体化を図る。
 98年度「夏期合宿」スケジュールは以下の通り。
  ★日時:8月1日(土)〜3日(月)
  ★場所:未定
  ★内容(案):未定(個人発表については希望者募集中)

(5)「書評委員会」の役割
 「書評委員会」の役割は、内外の論文・書籍などの批評を定期的に積み重ねること を通じて、その成果を『会報』の編集内容の企画につなげていき、更に『会報』を「 例会」にリンケージさせる中で、各種研究活動の活性化を図っていくことにある。当 面、松浦恒雄を責任者として企画・運営を行なう。
 ただし委員の確定は行なわず、広範な参加を呼びかけ、「問題意識交流会」的な場 として位置づけていく。若手会員を始め、多数の会員の出席と活発な発言を期待した い。従って、「書評委員会」という名称は誤解を招きやすいので、名称変更も検討す る。
 原則として、偶数月の最終日曜(「例会」当日)11:00より、同一会場にて開催す る。

(6)「特別事業」計画
 阪口直樹の担当とし、短期及び長期的計画を作成しつつ、その実施に入る。研究会 の事業として、現在のところ、以下のものを予定・検討している。
  @『中国20世紀文学研究ガイド』(仮称)作成
  Aその他
 なお、独立会計扱いとなっている「野草基金」をより有効に活用するためには、如 何なる形態があり得るのか、引き続き検討を深める。

(7)「野草ネットワーク」について
 パソコン通信を利用した『会報』『野草』の編集の効率化は定着した。コンピュー タネットワークは、単に事務の効率化に留まらず、遠隔地との交流や種々の情報提供 手段としても、大きな可能性を持っているのは明らかである。それを全ての会員のも のとするために、インターネットの普及なども視野に入れつつ、今年度も引き続き実 践的に検討を深める。その第1歩として、『野草』掲載論文の検索を始め、研究会に 関する様々な情報を発信している研究会「ホームページ」(青野繁治担当=WWW http://aonoken.osaka-gaidai.ac.jp/~aono2/bungei/bungei.shtml)をより豊かな内容に充実さ せていくことが必要である。
 また、「野草メーリングリスト(ML)」に関する検討を深める。

2.運営体制について

 研究会の運営は、事務局、『野草』編集委員会、「書評委員会」及び運営委員会に よって行なう。従来の担当者の移動などが生じたため、再編強化を図る必要がある。

(1)事務局
 事務局は、総会決定に基づき、『会報』編集・「例会」開催・『野草』印刷などの 日常的な実務を担当する。事務局担当幹事を中心とした責任体制をより明確にしてい く。今年度の幹事は、宇野木洋(運営)・松浦恒雄(研究活動)・阪口直樹(企画) の3人で担う。ほかに、北岡正子(「例会」担当)、絹川浩敏(財政・組織担当)、 平坂仁志(『野草』印刷担当)、今泉秀人・平坂仁志・好並晶・和田知久(『会報』 編集担当)によって事務局を構成する。

(2)『野草』編集委員会
 『野草』編集委員会は、今年度『野草』編集担当の今泉秀人(62号)・宇野木洋( 63号)・岡田英樹(64号)、平坂仁志(『野草』印刷担当)、北岡正子(「例会」担 当)、松浦恒雄・阪口直樹(事務局担当幹事)、太田進(運営委員長)で構成する。

(3)「書評委員会」
 各種研究活動活性化へ向けて大きな役割を果たすことが期待される「書評委員会」 は、松浦恒雄が責任者となって運営を行なう。固定化された「委員会」としてでなく 、多数の会員の自由参加による「問題意識交流会」的な内容にしていく。

(4)運営委員会と会計監査
 運営委員会は、事務局で処理が困難な問題が生じたり、長期的大局的観点が必要と される場合に、運営委員長の責任で開催され、問題の処理にあたる。その構成は、太 田進(運営委員長)・筧文生・是永駿・岡田英樹・谷行博・斎藤敏康・青野繁治及び 事務局構成メンバーとする。
 なお、財政の健全な執行を図るべく、会計監査:松村昂を置く。
                             (以上、敬称 略)

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