1999年1月例会記録


1月31日 晴 於京都白雲荘 出席者25名
報告及び論題
@和田知久「格非の長篇小説を読む――『敵人』(90)『辺縁』(92)『欲望的旗幟(95)』より」
 →レジメ参照
A「書評委員会」

 @は、一般に先鋒作家といわれている格非を再考察する一環として報告された。物語構築への執着と世界認識の呈示という格非作品の傾向に着目しつつ、初期のころの小説から95年以降の小説全体を、「叙我体」→「叙史体」→「(新)叙我体」と時期的に分類した上で、格非の長篇三作を、創作全体の変遷の流れに位置づけるものであった。さらに、初期のころの「叙我体」小説と95年以降の「叙我体」小説の相違点を抽出し、格非小説での先鋒性の淡化を指摘した。格非に先鋒作家としてのレッテルをはりつけてしまう事に、待ったをかける試みの感じられる報告であった。最後に、そもそも中国当代文学における「先鋒」とは何か、それを再検討することが研究の鍵になるのではないかというアドバイスがあった。
 Aでは、まず川田進氏による牧陽一著『アヴァン・チャイナ』の書評。偶然にも、はるばる関東から牧陽一氏が参加され、アート作品(冊子)やレジュメを提示し、中国の現代アートについての説明を加えられた。つづいて、絹川浩敏氏、松浦恆雄氏、宇野木洋氏によって、専門領域のものをはじめ専門外のものなど、各々ここぞと思う論文や本などが披露された。以上の書評に対して、数名の参加者から質問や意見、補足など、さまざまな発言がなされた。
 最後に、定例会のあり方についての問題提議(若手が積極的に参加していくのが妥当であるという指摘など)、その他の諸報告。六時ごろ、例会終了。この後、『野草』63号および『会報』を投函し、四条河原町の「静(しずか)」で、みなさん膝を交えての二次会となった。(上原かおり)

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