中国文芸研究会12月例会記録


 12月23日 於同志社大学 出席者?名
書評:小森陽一著『〈ゆらぎ〉の日本文学』(1998年日本放送出版協会)
コメンテーター:絹川浩敏、代田智明

 12月は、例年通り書評大会であった。今年の「課題図書」は小森陽一氏の『〈ゆらぎ〉の日本文学』。各章で明治以降の著名な作家を取り上げ、個々の背景と、「日本」的諸要素との軋轢が生み出す「ゆらぎ」をキーワードに、「日本近代文学」なるものの実体に揺さぶりをかけようとする意欲的な著作である。
 まずは立命館大学の絹川氏が、「中国20世紀文学」をめぐる近年の言説を紹介し、本書の「日本近代文学」に対する視点が、我々中国文学研究者にとって有効性を持ちうるかという点について概括された。
 続いて東京大学の代田氏は、小森氏が各章それぞれの主題に見られる「ゆらぎ」を摘出した後、如何なる「批評装置」を用いて分析したかを整理され、詳細なレジメで提示された。一方で小森氏の同僚という立場を通して、「講釈:『小森陽一』」と題し、小森氏とご自身が家庭・学校に於いて配偶者や学生に対して各々どのような呼称を用いるかという日常的且つ明快な例えを用い、「国民国家におけるさまざまな『差異』の隠蔽」について意見を述べられた。
 以上、コメンテーターの発表に対して、数名の参加者から発言がなされた。各々、本書について、中国近代文学との差異、文体やことば(方言、文・口語)に対する言及の限界、分析手法そのものへの批判などについて、時には自身の研究分野における状況を引き合いに出しながら、活発な意見交換がなされた。(なお、以上の紹介は全体像のごく一部を、印象に残ったものに限って述べたものであることをお断り申し上げたい。)
 最後に、『野草』64号編集状況の紹介、次回例会の案内が行われた。
 続いてお待ちかねの忘年会は、先斗町の京都らしい趣あふれる居酒屋にて開催。はるばる東京からの参加者もあり、予想以上の大人数に机からはみ出て車座になるグループが出るほど。一年の締めくくりに相応しく、大盛会となった。(ZT)

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